「トブルク・フェリー・サービス」
使用キット:
ヴァンパイア(1/700|タミヤ|ウォーターライン・シリーズ)

スタイル

★★★☆☆

設定年と装備に疑問あり。

モールド

★★★★★

素組みで十分。マストがやや太い?

作る楽しさ

★★★★

艦底板の継ぎ目は気にしない方向で製作するのが吉かと。

オススメ度

★★★★

地味艦ですが、マレー沖のZ部隊を編成するのに不可欠。

〈ヴァンパイア〉は以前に単艦で製作しました。こちらは地中海で輸送作戦に従事している頃をビネット風に仕上げたものです。製作記はこのあたりに。

製作テーマ

もしかすると自分が知らないだけで、大戦中の〈ヴァンパイア〉の写真は他にたくさんあるのかも知れませんが、入手できたのは地中海作戦時のものばかりでした。またインド洋に戻ってからは、もっぱらやられ役の印象が強いので(〈レパルス〉乗員救助に奔走しましたが)、最も活躍したと思われる「トブルク・フェリー・サービス」の頃を再現してやりたいと考えました。

第二次大戦の勃発に伴い、イギリス支援のためにオーストラリア海軍は〈ヴァンパイア〉他V/W級駆逐艦を地中海に派遣します。当初は訓練の延長でしたが、イタリア参戦、そしてドイツ軍が地中海に戦力を投入するようになると、のんびりムード一転。ギリシアからの撤退作戦に始まり、つづいてクレタ島からの撤収にも参加するなど、老朽駆逐艦は酷使されました。

その際、イタリア海軍の水上戦力よりもドイツ空軍のほうがより脅威であることが明らかとなり、〈ヴァンパイア〉はアレキサンドリアで対空火器を増設しています。

枢軸軍の攻勢は北アフリカでも続き、もっともこちらはドイツ・アフリカ軍団司令官のロンメルの暴走でもありますが、ともあれ油断していたイギリス連邦軍を奇襲し、結果としてイタリア軍が1940年に失ったリビアの大半を取り返したのでした。それが1941年3月のこと。が、イギリス連邦軍は何とかトブルクに逃げ込むことには成功しました。

トブルクはリビア最大の港かつ要塞であり、ここを素通りしてエジプトを狙えばロンメルは背後を衝かれることになるし、第一補給線が危なくて仕方がない。しかし正面攻撃を行うには戦力が足りないで、抜き差しならない状態に追い込まれてしまいます。結局、包囲するにとどめ、その間、イギリス連邦軍はアレキサンドリアから駆逐艦を利用した高速輸送部隊を編成、孤立した友軍を支えました。この輸送作戦に当たったのが「屑鉄艦隊」の異名を持つオーストラリア海軍のV/W級駆逐艦だったわけです。いつしかこの作戦は「トブルク・フェリー・サービス」と呼ばれるようになりました。物資を満載した駆逐艦が夜間にトブルクへ突入し、2〜3時間で積荷を降ろし、負傷者を乗せて全速力で帰還する光景は、2年半後の「東京急行」を彷彿とさせます。

なお、イギリス連邦軍は陸上からのトブルク解放を試みますが、2回失敗した後、11月の「クルセーダー」作戦で、ようやく成功しています。しかし翌年5月のガザラ・ボックスの戦いでは、今度はあっさりと喪失しました。

ということで、「〈ヴァンパイア〉がトブルクへ入港、荷物を放り投げた後、負傷者を乗せて帰ろうとしている様子」を再現したいと思います。

製作に関するあれこれ

(1)〈ヴァンパイア〉 基本的には前回製作したのと同じですが、負傷者を乗せている写真を見ると、探照灯台が魚雷発射管の間に写っているようなので、そのように修正してあります。また高角砲の代わりに4連装ポンポン砲を置き、魚雷発射管の代わりに高角砲を設置しています。

防弾板やダビット、爆雷投下台はホワイト・エンサイン社のエッチング・パーツ(以下PE)。意外に使えるパーツが多くて重宝します。

塗装は全てタミヤ・アクリルで。エナメルによるウォッシングを回避するため、白サフで下地塗装した後、ダークグレーとブラウンでシャドウ&汚しを演出してから、薄めの塗料で上塗りしています。甲板はタン色ですが、これは滑り止め材のコーティングを表しています。迷彩は2色にしていますが、3色であった可能性もあります。写真でパターンが判別ではなかったため、わかる範囲でこのような塗装になりました。

張り線はお馴染み「鮎ゲッター」。

(2)タグボート ドラゴンのエセックス級空母からもってきました。喫水線で切断し、窓枠をPEに交換しています。汚れているほうが「らしい」と思い、こちらはパステル粉を使って派手にウェザリングしています。ランチは〈キング・ジョージV世〉から。煙突をパイプに交換して手すりをつけています。

(3)ベース スーパーキッズランドのコンテストに出展しよう、と思っていたので、搬入の手間を考え、アクリルケースをベースにしました。サイズのバリエーションが豊富なはざい屋さんをよく利用しています。150mm×105mmサイズ。桟橋は自作の予定でしたが、時間がなかったのでスカイウェーブ・シリーズの海軍基地から流用。オーバー・スケールの滑り止め表現を削った後、外縁部にプラ板を貼り、1段にしたPE手すりを取り付けています。

(4)物資と車両 運んできた物資はプラ棒の切り出しと、使わない艦艇装備品パーツの細切れです。カタパルトはトラスに合わせて切り出されています。トラックもスカイウェーブ・シリーズから。どこにも売っていなくて、オークションで「硫黄島セット」を購入しました。その直後に最終再販が決定したのは良い思い出。乗員、乗船待ちの負傷兵もPEで準備はしたのですが、どう考えてもうるさくなりそうだったのでやめました。

(5)ラベル インクジェット・プリンター用のシルバー・ラベルを使用。便利な時代になりました。

最後に

コンテストは選外でしたが、良い経験になりました。ウォーターライン・シリーズの出展作は他に3点あり、いずれもが接岸中だったのが笑えます。来年、出展するかどうかはわかりませんが、するのであればもう少し工夫を凝らしたいものです。

主要参考サイト

サイト名

コメント

SEA POWER CENTRE AUSTRALIA

オーストラリア海軍のオフィシャル・サイト。〈ヴァンパイア〉の戦歴が事細かに紹介されています。

Wikipedia

基本。

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